2008-06-03 あんなことをしてしまった自分はなんて可哀そうなのだろうと思った。さらに思った。曜子さんはなんて可哀そうなのだろう。あの人はきっといまでも死んでしまいたいのだ。だからあれほど一生懸命になって洪治に感謝しようとするのだ。他に生きるすべを見つけがたくて、生きる理由を見つけがたくて、たとえ嘘だと分かっていてもあの晩の洪治を信じようとしているのだ。そうするしかないのだ。彼女が生きるためには嘘も真実もどこにもあってはならないのだ。 し 白石一文『草にすわる』(光文社、2006年、p.91)この主人公の独白は、大きく覆されることになる。080603-42