2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮社、2003年)

本を読んだことで、映画の『重力ピエロ』(森淳一監督)の評価が私の中で一段と高まっている。本より映画の方がいいことってそうはないのであるが。『愛を読むひと』(原作は『朗読者』)も映画の方がよかったが、あっちは本を先に読んでいたから、受け止め…

林望『リンボウ先生家事を論ず くりやのくりごと』(小学館、1998年)

冗談でも揚言でもなく、私は料理が上手い。そう言うと、「男の料理」のようなものを想像して、ふと意地悪い笑いを浮かべる女の人もいることかと想像されるのだが、それはとんだ見当はずれというものである。(p.133) 「揚言」に「ようげん」のルビ なにしろ…

別役実『日々の暮し方』(白水社、1990年)

「日々の暮し方」というのは、そりゃ人それぞれあるのだろうと思うが、別役実が日々を暮らすとなると、それは全部「正しいやり方」でもってなされなければならないらしい。なにしろ本を開くと、「正しい退屈の仕方」だの「正しい電信柱の登り方」だのがずら…

プーラン・デヴィ(武者圭子訳)『女盗賊プーラン』下巻(草思社、1997)

わたしが何も話さないうちから、なんと多くの人がわたしについて語ってきたことだろう。なんと多くの人がわたしの写真を撮り、それをいかに自分勝手に使ってきたことか。虐待され、辱められて、なお生きている貧しい村娘を、人々は軽蔑してきた。 助けを求め…

プーラン・デヴィ(武者圭子訳)『女盗賊プーラン』上巻(草思社、1997)

母は、その子にお乳をやらないことに決めた。それでその子を育てるのは、わたしたち姉妹の役目になった。母は畑の仕事がいそがしく、とても赤ん坊の面倒は見ていられないというのである。わたしたちはなんとかして、ミルクを調達しなければならなかった。そ…

カズオ・イシグロ(土屋政雄訳)『わたしを離さないで』(早川書房、2006年、解説:柴田元幸)

あなた方の人生はもう決まっています。(p.98) ネタバレ満載で平気な私(それなりの理由はあるのだ。私だって前知識は嫌い。でもそれはその人が避ければいいことなんでね)だが、さすがにこの本について書くのは躊躇われた。で、これだけ。カズオ・イシグロ…