伊坂幸太郎『重力ピエロ』(新潮社、2003年)

本を読んだことで、映画の『重力ピエロ』(森淳一監督)の評価が私の中で一段と高まっている。本より映画の方がいいことってそうはないのであるが。『愛を読むひと』(原作は『朗読者』)も映画の方がよかったが、あっちは本を先に読んでいたから、受け止め方はまた違ってくるのだけれど……。

というわけで、引用はあまり本の内容とは関係ないところから……。って、あの、弁解になってしまうけれど、この本がよくないと言っているわけじゃないんで。どころか、なかなか深いことを軽々と語っているのだ。

 「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」春は、誰に言うわけでもなさそうだった。「重いものを背負いながらタップを踏むように」
 詩のようにも聞こえた。
 「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを忘れているんだ」
 続ける春の言葉が印象的だった。(p.75)

ね、軽々と。いや、陽気にか。って、なんだ、結局本に関係あることを引用しちゃったよ。

 世の中には、インターネットが世界の全てだと信じている者も多い。インターネットで検索して表示されない人物や物事は、世界中のどこにも存在していないのだと考えているのだ。だとすると、これからは、世界から身を隠したいのであればコソコソとねぐらを移動させる必要もなくて、検索条件をすり抜けることだけに腐心すれば良いのではないだろうか。(p.110)

なるほどと思って読んでしまったが、「インターネットが世界の全てだと信じている者も多い」? これは前提が違ってる気がするが、でもそう言い切られてしまうとなぁ。