2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

喜多川泰『君と会えたから…… The Goddess of Victory』★★☆(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2006/2007-7)

青春小説仕立ての自己啓発本。無理矢理自己啓発部分を押し込んでいるので、ぎくしゃくではあるのだが、高校生の恋にミステリー的要素も絡めて悪くないつくりだ。若い人がとっつきやすいように、と考慮してのことだろう。適当に書きだしてしまうと説明不足は…

渡辺京二『黒船前夜 ロシア・アイヌ・日本の三国志』★★★★☆(洋泉社、2010-1)

刊行されて二年以上も経っているというのに買った本はまだ「初版」だった。こんな素晴らしい本(ただし索引がないのはいただけない)がと思うが、やはり小説ほどには売れないのだろう(って、私とて手を伸ばすのは三文小説ばかりだからなぁ)。 翻って考えれ…

有川浩『ヒア・カムズ・ザ・サン』★☆(新潮社、2011-1)

『ヒア・カムズ・ザ・サン』★★と『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』★の二篇収録。自分からではないにしろ有川浩本とはほとんどつき合ってきたが、この本は駄目だった。特に二つめの『ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel』は。 人生で特別に大事な場所にいる…

姫野カオルコ『ハルカ・エイティ』★★★(文藝春秋、2005-1)

好きな小説か、と問われれば答えに躊躇してしまうかもしれない。が、あまりにも多くのまっとうなことが書かれていて、とても無碍にできない。目下の、私の姫野カオルコ様、であるし……。なのだけれど、引用となると考え込んでしまうんである。で、場違いかも…

姫野カオルコ『ドールハウス』★★★☆(角川文庫10415、H9-1)

『人形の家』なのだから主人公の理加子は最後に家を出るのである。そこは同じだが、理加子の家出は夫から自由になるのではなく、さらに根源的である両親の呪縛からの逃避だ。 私には理加子を、決して奇異な、特別な少女として描いたつもりはない。おそらく現…

小栗左多里『プチ修行』★★☆(幻冬舎文庫、H19/H22-3)

修行の途中、座禅を組みに行ったお寺で気がついたことがある。お寺にいる人が誰一人、幸せそうな顔なんてしていないのだ。長年修行している人も、幸せどころか世界中の不幸をしょって立っているみたいな感じである。どう考えてもその辺で犬を散歩させている…

高島俊男『座右の名文 ぼくの好きな十人の文章家』★★★(文春新書570、2007-1)

この本の成り立ちがまえがきに書いてある。『本の雑誌』に書いた短文がきっかけでできたのだそうだ。そして、その短文も掲載されている。で、これが滅法面白い。 小生が、最も相性がいいと感じるのは斎藤茂吉である。つねに文章が正直で、鈍重でありながら爽…

三浦しをん『神去なあなあ日常』★★☆(徳間書店、2009-6)

彼らの口癖は「なあなあ」で、これはだれかに呼びかけているのでも、なあなあで済ませようと言っているのでもない。「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスだ。そこからさらに拡大して、「のどかで過ごしやすい、いい天気ですね」という意味まで…

辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』★★☆(講談社、2009-5)

結婚することが人生の前提にあり、未来に能力を繋げる仕事なんか望みもしない。経済的にも精神的にも一人立ちできない女たちにとって、結婚は間違いなく唯一の成果だった。その価値観しかないから、三十代以上夫なし子供なしの女性を指す「負け犬」の言葉は…