2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

奥田英朗『イン・ザ・プール』(文藝春秋、H14年)

「治療、治療。あははは」(p.259) このシリーズは、まず映画の『イン・ザ・プール』を観て、そのあとに『空中ブランコ』。半年後の今、一番先に読むべきこの『イン・ザ・プール』。って、順番、間違えたよなぁ。いいんじゃない、あははは。

中村喜春『江戸っ子芸者一代記』(草思社、1983年)

その頃の戸籍の上の手続きのややこしさは今の方には考えられないと思います。 まず、あたしはひとり娘(相続人)です。だから、よそに嫁に行くことはできません。家を動くことができないのです。さりとて相手の人が養子に来ることも、もちろん不可能です。そ…

車谷長吉『漂流物』(新潮社、1996年)

その晩、北川氏はこんな話をした。――僕の親父は鳥取県の寒村の生れで、東京へ出て来て、学校をでたあと会社員になって、世田ヶ谷区の祖師ヶ谷に家を買いました。それが昭和三十年代のはじめ、高度経済成長がはじまったころです。そのころにはもう姉と私は生…

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社、2007年)

「だと思った。」(p.352) 主人公が残したメモへの昔の彼女からの返事。国家という薄気味悪い相手と闘った(闘わざるをえなかったある凡人のエンタメ大作。凝りすぎは、設定だけじゃもの足りなくなったのか、同字数会話やアイコン付き小見出し(形で現在か…

アラン・ムーア、デイブ・ギボンズ『WATCHMEN ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション、2009年)

世界は偶然の塊だ。パターンなんて、見る者が自分の空想を押し付けただけだ 本当は意味なんかありはしない この最低の世界を創ったのは、形而上学的な超越力じゃない。子供を殺したのは神じゃないし、その死体を犬に喰わせたのも運命なんかじゃない 俺たち人…

角田光代『予定日はジミー・ペイジ』(白水社、2007年)

「私、ひょっとしたら子どもできたの、うれしくないかもしれない」(p.20) これは最初の方で主人公が、夫に、自分の気持ちを打ち明ける時のセリフ。けど本当は「ひょっとしたら」「うれしくないかもしれない」んじゃないものだから、すぐに「だからねえ、私…