2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

角田光代『対岸の彼女』(文春文庫、2007年)

父に会ったってナナコは何も言わないだろうに、自分は何も必死に隠しているんだと、うしろの窓をふりかえり、遠ざかるタクシーを見つめて葵は思う。ナナコは何も言わない。客寄せのために内部をごてごて飾りつけしたタクシーに乗っている父を見ても、せこい…

吉本隆明『私小説は悪に耐えるか』(新潮文庫、車谷長吉『鹽壺の匙』の解説)

私小説が自然主義文学の胎内から生れるについては、その経緯がどんなにいびつであっても、それなりの必然があった。また「私」をめぐる人間関係を描写するかぎり、真実らしさにゆきつくことについて理念にも似た確信もあった。その場所で言えば私小説はひと…

車谷長吉『鹽壺の匙』(新潮文庫、H7年)

詩や小説を書くことは救済の装置であると同時に、一つの悪である。ことにも私小説を鬻ぐことは、いわば女が春を鬻ぐに似たことであて、私はこの二十年余の間、ここに録した文章を書きながら、心にあるむごさを感じつづけて来た。併しにも拘わらず書き続けて…

池澤夏樹『むくどり通信』(朝日文芸文庫、1997年)

ぼくはこの本の中で恐龍よりもおもしろいものをみつけた。この巨大遊園地を作る資金を出したのは他ならぬ日本の合同資本ということになっているのだが、その名が、ハマグリとデンサカ。こんな名前が日本にあるだろうか。 さらに読みすすむと、ハマグリの名は…

日経WinPC編集部『日経BPパソコンベストムック パソコン自作バイブル』(日経BP出版センター、2009年)

「パソコン自作の世界」へようこそ。自分だけのパソコンを完成させた気分はいかがですか? 自分で作ったパソコンだから、パーツの交換も思いのまま。「買い換えるもの」だったパソコンが、今日からは違います。ハードディスクドライブの容量が足りなければ、…

黒田●之助『黒田●之助 私の履歴書』(日本経済新聞社、S61年)●は「日」+「章」

父を語る時、郷土、富山を抜きにしてはできない。大正三年に新しくつけた屋号「黒田国光堂」と大正六年に初めてつくった商標「国誉」に込められていたのは生まれ故郷への思いそのものである。国は越中、富山を指していたのであった。 富山から大阪に出るには…

郷ひろみ『若気の至り』(角川書店、2000年)

だからボクは郷ひろみなのだ。これが、郷ひろみが郷ひろみたる所以なのだ。(p.283) まさに、そんな感じの本だった。って、何言ってるかわからない? ま、そっか。 水を恐れることのなかったボクは、25メートルプールで泳いだりしてかなり自信をつけていた…