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昨年五月二十五日に五十六歳で亡くなったロシア語通訳者でもあった米原万里の書評集で、週刊文春での書評が、3/5ほどを占めている。仕事の関係もあってロシア関連の、多分硬質のノンフィクションが多いはずだが、まったく退屈することがなかった。この書評集…
私小説が自然主義文学の胎内から生れるについては、その経緯がどんなにいびつであっても、それなりの必然があった。また「私」をめぐる人間関係を描写するかぎり、真実らしさにゆきつくことについて理念にも似た確信もあった。その場所で言えば私小説はひと…
こうした同時代の監督のなかに大島渚を置いてみると、彼の不器用なまでの真面目さが際立って意識されてくる。というも大島はいかなる場合にも作品の不在に拘泥し、文章を通してなんとかそれを論理化しようと真剣に努めてきたからである。なぜ自分が映画を撮…
本(講談社)2008年10月号、p.11 横山泰子「ママでも本」自著『江戸歌舞伎の怪談と化け物』の宣伝文。本屋で見かけても手に取る可能性のなさそうな本だが、北京オリンピックにはじまって、『東海道四谷怪談』を『フランケンシュタイン』まで持ってきて並べら…
(p.4、山本武利)データベースを使えば、言説の内容と数量的なデータとの重層的な構造を立体的に示すことができるようになるでしょうね。ところが書物の場合には、時系列的に並べざるを得ないので、ある視点からの見方をどうしても強力に出さざるを得ない。…
星星峡(幻冬舎)2008年9月号、p.95 芳麗「心だけでなく、体ごと持って行かれた。」(渡辺やよい『ピーター・ノースの祝福』の書評)体感とはすごい絶賛だけど、渡辺やよい、知らない(芳麗も)。レディコミ(多分、読んだことがない)でエロティックなマン…
一冊の本(朝日新聞出版)2008年9月号、p.84 四方田犬彦「音楽のアマチュア35 ニーノ・ロータ」そうなんだけど、というか、セリフは音じゃないんかい? 映画は総合芸術にしても、メッセージとなると言葉によりかかる部分が大きくなるから、評論家の態度は仕…
本の話(文藝春秋)2008年7月号、p.64 吉行和子「ひとり語り」第14回吉行和子が「大川橋蔵特別公演、新吾十番勝負」で歌舞伎座の舞台に立ったとき、女形の先生にこう言われたのだと。これまでやってきたこととはまったく正反対の演技、化粧のやり方からして…