プランゲ文庫では、検閲官に赤鉛筆や青鉛筆で「delete(削除)」とか「suppress(発行禁止)」と書き込まれたゲラを見ることができます。たとえば林健太郎は『歴史と現代』という本を執筆した際、事前検閲で削除の指示を受けたところをうまく文章をつないで直しているのに対して、羽仁五郎は『歴史』で削られたところを脈絡なくつないでそのまま本にしています。

(p.4、山本武利

データベースを使えば、言説の内容と数量的なデータとの重層的な構造を立体的に示すことができるようになるでしょうね。ところが書物の場合には、時系列的に並べざるを得ないので、ある視点からの見方をどうしても強力に出さざるを得ない。書物というものは宿命的にそういうものなのでしょう。
(p.6、吉見俊哉

日本国憲法が制定されてから戦争放棄が謳われたり言論の自由が保証されたりしたような印象があるけど、すでに言論の自由がある程度あって、もう軍隊はないわけですから、平和という状況があって、むしろ憲法のほうがあとから来たのです。
資料集を読んでいると、憲法以前の雰囲気が分かって面白い。戦後のデモクラシーというのは自然発生的にできた要素が強くて、憲法はむしろそれを保証する形であとから制度化されてきたということが浮かび上がってくる。

(p.6、御厨貴
図書(岩波書店)2008年9月号 《座談会》占領期雑誌と戦後日本人の心象風景−「占領期雑誌資料体系 大衆文化編」刊行によせて 御厨貴、山本武利、吉見俊哉

要約しても意味がない(する力がない)ので、ひとりずつ適当に抜き書き。

080930-154