この数年、地味系スポーツを題材にした小説がヒットしていることもあり、それまでしらなかった世界を、汗もかかずエアコンのきいた部屋で、のほほんと覗き見る機会もぐっと増えた。そんなとき、つくづく読書の幸福を噛みしめてしまうのだ。

星星峡(幻冬舎)2008年9月号、p.96 藤田香織「汗とは無縁の室内で、熱き戦いを読む幸福。険しき「武士道」をつき進む、剣道少女再登場!」(誉田哲也『武士道セブンティーン』の書評)

そう言われてみると、読書(映画とかも)なんて、ずいぶんといい加減なものである。自分は別のところにいて、その気になろうてんだから(そこまではのめり込まないという読み方もあるが)。だけど、本を読む行為はあまりにありふれていて、特別なこととは思ってもいなかったから、そんなふうには考えもしなかった。あくまで疑似体験と、高をくくっていたことになるんだろうか。まあ、ここでは読書の幸福について語っているから、そう気に病むことはないのだが。

本を読む楽しさは数あれど、出不精で運動嫌いな私にとって、スポーツ小説には格別の思いがある。

書評の出だしはこうで、だから藤田香織は余計そう思うのかも。

080929-153