2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『太宰治全集』8巻(ちくま文庫、1989年)

「大きいね。トラックが大きいね。」とお母さんはすぐに僕を口真似してからかった。 「大きくはないけど、強いんだ。すごい馬力だ。たしかに十万馬力くらいだった。」 「さては、いまのは原子トラックかな?」お母さんも、けさは、はしゃいでいる。(p.143『…

米原万里『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋、2006年)

昨年五月二十五日に五十六歳で亡くなったロシア語通訳者でもあった米原万里の書評集で、週刊文春での書評が、3/5ほどを占めている。仕事の関係もあってロシア関連の、多分硬質のノンフィクションが多いはずだが、まったく退屈することがなかった。この書評集…

カーレド・ホッセイニ(佐藤耕士訳)『君のためなら千回でも』下巻(ハヤカワepi文庫、2007年)

(略)おれの長男の目ン玉を賭けてもいいが、あんた、そのパコール帽をかぶるのははじめてじゃないのか」ファリドは、若くして朽ちかけた歯を見せて、にやりと笑った。「いい線いってるだろ?」 「どうしてそんなこというんだい」 「あんたが知りたがったん…

カーレド・ホッセイニ(佐藤耕士訳)『君のためなら千回でも』上巻(ハヤカワepi文庫、2007年)

「いいか、ムッラーがなにを教えようと、罪はひとつ、たったひとつしかない。それは盗みだ。ほかの罪はどれも、盗みの変種にすぎない。わかるか?」(p.33) 主人公アミールの父ババの教え。ムッラーは先生。「男を殺せば、それは男の命を盗むこと」で「男に…

枡野浩一『ますの。枡野浩一短歌集』(実業之日本社、1999年)

差別とは言わないまでもドラマではホステスの名は決まってアケミ(p.64) そう言われてみると……って、テレビドラマなんてほとんど見たことがないっていうのに、同調しちゃったら可笑しいのだけど……思い込みで作ってないんだよね。 でも僕は口語で行くよ 単調…