『太宰治全集』8巻(ちくま文庫、1989年)

 「大きいね。トラックが大きいね。」とお母さんはすぐに僕を口真似してからかった。
 「大きくはないけど、強いんだ。すごい馬力だ。たしかに十万馬力くらいだった。」
 「さては、いまのは原子トラックかな?」お母さんも、けさは、はしゃいでいる。(p.143『パンドラの匣』より)

十万馬力というのは『鉄腕アトム』の謳い文句とずっと思い込んできたが、まさか太宰の小説に出てくるとは。で、こっちの方が早い。十万馬力=原子力というのは、当時の人が普通に思い浮かべた言葉なのかしら。

ついでながら、アトムは『地上最大のロボットの巻』から100万馬力になってしまって、インチキ臭い感じがしてしまったものだが(これは私が分別臭くなりだしたからかも)、ムーアの法則ってぇのもあるからあながち……って、ムーアの法則万有引力とは違うんで、って、それも意味が違うんだけど。