2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

 白石一文『ほかならぬ人へ』(祥伝社、H21年)

白石一文ファン?としては、これで直木賞受賞というのはちょっとという感じがしなくもないが、賞なんてタイミングとかもあるのだろうし、なにより本人が喜んでいるみたい?なんで、まあ、いいんでしょう。単行本には、似た題名の「ほかならぬ人」探しの話が…

 津田大介『Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社 新書y、2009年)

このダイナミズムを更に突き詰めたのがツイッターだ。ツイッターはリアルタイム性が高く、気軽に他人の発言にツッコミを入れやすい構造になっているため、何かをつぶやいたあと、即座に反応が返ってくる。ある種メッセンジャーやチャットのような時間感覚と…

 藤堂志津子『まどろみの秋』(新潮文庫、平成10年)

昨日は佐賀のプロポーズを、打算的に考えないでもなかったのに、綾美からまるでプロポーズされたこと自体を祝福するような口調で話題にされると、急に気がとがめてきた。(p.162) どんな本でもひとつくらいは引用したくなる箇所があるものだが、この本には…

谷川雁『汝、尾をふらざるか 詩人とは何か』(思潮社 詩の森文庫、2005年)

なぜなら俳句がつきあたれなかった近代思想の核にともかくも接触したのが現代詩であり、それは異文明をみつめてふっと黙ったカナリアの内なる〈唖〉の自己表出とみなせますから。すぐれた現代詩は一種の〈手話〉だとはいえませんか。現代詩の過去になんらか…

佐藤可士和『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞社、2007年)

たとえるならまさに、僕がドクターでクライアントが患者。漠然と問題を抱えつつも、どうしたらいいのかわからなくて訪れるクライアントを問診して、症状の原因と回復に向けての方向性を探り出す。問題点を明確にするのと同時に、磨き上げるべきポテンシャル…

湊かなえ『告白』(双葉社、2008年)

物心ついた頃から、ひたすら褒められながら育った僕は、自分は頭がいいし、スポーツもできると思っていた。でも、田舎とはいえ、それなりに人数の多い小学校に通っていると、三年生になる頃には、それは母さんのただの願望であって、実際の僕はがんばったと…

小川洋子『完璧な病室』(中公文庫、2004年)

表題作の他、『揚羽蝶が壊れる時』『冷めない紅茶』『ダイヴィング・プール』を収録。『完璧な病室』 「電気をつけましょうか。」 「いいえ。このままにしておいて下さい。」 「ふ、服は脱いだ方がいいですか。」 「はい。あなたの、胸の筋肉で抱いて欲しい…

田宮俊作『田宮模型の仕事』(文春文庫、2000年)

ほかの模型メーカーは、つぎつぎとプラモデルの新作を出しました。私のところではあいかわらず、落ち目になった木製模型屋として細々とやっていました。 そんなおり、樹脂を扱っている材料屋さんから「新規に金型を作れないなら、不要になったプラスチック玩…

角田光代(文春文庫、北尾トロ『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』の解説)

本書を読んでいて思うのは、わけのわからない人間が多すぎる、ということである。わからないのは事件ではなく、人間なのである。(p.330) うーん、確かに。でもその事件は、わからない人間が起こしてるんで……。

北尾トロ『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』(文春文庫、2006年)

それはまだいい。最悪なのは服装だった。 仮にも裁判である。公式の場である。持ってなければスーツを着ろとは言わない。トレーナーにジーンズでもいいだろう。 でも、黒いトレーナーの右腕と背中に白ヌキでドクロのマーク入りってのはシャレにならんだろう…

小川洋子『博士の愛した数式』(新潮社、2003年)

「君の電話番号は何番かね」 「576の1455です」 「5761455だって? 素晴らしいじゃないか。1億までの間に存在する素数の個数に等しいとは」 いかにも関心したふうに、博士はうなずいた。 自分の電話番号のどこが素晴らしいのか理解はできなくても、彼の口調…