2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「限界集落」と呼ばないで

朝日新聞2008年6月18日 宮崎県、新名称を募集(署名記事:菊池文隆) 高齢化が進み、共同作業を続けるのが困難とされる地域を指す「限界集落」の名称について、宮崎県は「生活している住民の意欲を失わせ、社会に間違った認識を与えかねない」として、新呼称…

「以前おまえにこういう問題を出されたことがある。人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか――覚えているか」

「覚えている。僕の答えは問題を作るほうが難しい、だ。解答者は、常に出題者に対して敬意を払わねばならないと思っている」 「なるほど。じゃあ、P≠NP問題は? 自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確かめるのとでは、どちら…

古典的ともいえる単純な形態と堅固な構築性をもつコローの風景画だが、画家が自然から最初に受けた瑞々しい印象がそこから失われることはない。ルネサンス以来の古典的伝統を引き継ぎ、鋭敏なレアリズムの感覚と抜群の造形力によって風景画に革新をもたらしたコローの作品は、アカデミスムの画家からも前衛の画家からも賞賛された。

国立西洋美術館内にあった説明プレートからやだな、こういう説明。「画家が自然から最初に受けた瑞々しい印象」って、言いきれるのか(私がここまで言うこともないのだが、虫の居所を悪くさせられたので)。080628-67

だから、こんなに無邪気に自分のしあわせを宣言されると、わたしはびっくりしてしまう。自分のしあわせは、自分だけ知っていればいいではないですか。他人に大声で言って、そんな風になれなかった人は、どう思うか考えないのかな。文句の付けようのないことを、正々堂々言っちゃってなんだかこわいなぁと思った。ひやっ、とする。

asta(ポプラ社)2008年7月号、p.57 夏石鈴子「なついししあわせ雑貨堂 第15回 五月生まれの女の子」26歳の主婦が「女に生まれ、母になり、こんなかわいい子供たちを産めてうれしく思っています」と投書していることについての、夏石鈴子の感想である。 まわ…

激甚災害指定

恥ずかしながら知りませんでした、この言葉。最初に聞いたのは先週あたりのテレビだったか。激甚災害指定基準というのもあった(http://www.bousai.go.jp/jishin/law/004.html←しかし読む気は失せるね)。災害を規模で規定するというのは、わかるようでわか…

面白い書評はあっても、正しい書評なんてない。それが自分がブックレビューを書いたり読んだりする際の基本スタンスなんです。

本が好き!(光文社)2008年7月号、p.27 豊崎由美「ガター&スタンプ屋ですが、なにか」1 (崎は大が立)引用部分はほんの入口で、これを読むと、豊崎由美の書評についての意気込みがわかる。冒頭に紹介されているヴァージニア・ウルフの『書評について』から…

私は通称・回文刑事。

物事を裏から、そして言葉を下から眺めることのできる県警唯一の男だが、この新米はまだ私の作品に気付いていない。 中村航、フジモトマサル『終わりは始まり』(集英社、2008年、p.7)そりゃ気付きませんよ。私もいままでに数人から「回文って何」と言われ…

「そうなんです。本当に嫌なんです。自分が何も考えていなかったことがわかるし(笑)。工夫して変になっているならいいけど、無意識に変なんですよね」

キネマ旬報2008年6月下旬特別号No.1509、p.26 映画作家としての三谷幸喜、徹底特集「ザ・マジックアワー」 「ラヂオの時間」は見返すと恥ずかしいそうですね(笑)――というインタビューアーの問いに答えて。作り手というのは、大方の観客が見逃してることに…

それでも無事に横断歩道を渡りきったぼくは、また右に折れて歩き出し、そしてふと旭屋の軒先からぶら下がっている「本」というネオンに気づいてなんということもなしに扉を引いて店の中に入った。でも、入って山のように積まれ並べられた本を眺めたとたんにぼくを襲ったのは、或る吐き気のような不快感だった。いったいなんのためにこんなに本があるのだろう。

庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(中公文庫、2008年、p.143)先週、銀座での時間調整はここでと決めていた旭屋がなくなっていて、あせったが(4月25日に閉店してるわけだから2ヶ月近くも気づかずにいたっていうのにね)、銀座の旭屋といえばなんたって『赤…

しかし、この類的存在としての人間の解放という理念には、その底に、いかにも北的な重要なモチーフがかくされていた。それは人間は、共同的なものであるべきだという要求で、これこそ彼がおのれを社会主義者とみなした理由の根本であると同時に、彼がのちに擬ファシスト的な転落をたどらねばならなかった、秘密の核心にほかならなかった。

渡辺京二『北一輝』(朝日選書278、1985年、p.107)昨日の勉強会(最近出席率があまりよろしくない)で取り上げられた本。内容の濃い本だから油断するつもりはなかったが、前に1度読んでいるという気のゆるみがどこかにあったらしく、2度目もあえなく沈没し…

「キャンセルするぐらいなら沖縄に来ないでほしい」

朝日新聞2008年6月19日朝刊、16面、声欄 「沖縄観光客は現地理解して」フリーター 石川尚彦(那覇市 26)今、沖縄は観光人気に沸いているらしい。7年前の9.11で、修学旅行や団体旅行のキャンセルが相次いだことを引き合いに出しての投稿。言われてみれば当然…

「感情のある部品でしょうね」

テレビ朝日 報道ステーション自分たちが「使い捨ての部品」になっていると、ある派遣社員が語っていた。まだ30代の彼が、本当に自分をそう評価せざるを得ないのだとしたら、やりきれない社会になってしまったというほかない。新聞の折り込みには求人広告も多…

「地元の理解が得られれば、再稼働したい」

朝日新聞2008年6月4日毎日jpを見ていて「<石原産業>四日市市に本社機能移転 不正再発防止で」の記事が目にとまり(これは今日の話)、そういえば、とここに書こうと思いながら忘れていた朝日新聞の記事を思い出した。新聞を引っ張り出してくると、猛毒のホ…

初めてタイムを教えてもらった時、なんだかゾクリとした。練習ではどうしても出なかった43秒台なのに、いきなり真ん中へんがドンと出るなんて。43秒51、俺、この数字、忘れないかも。どうってことないタイムなんだろうけど、俺のもんだ……っていうか、俺らのもんだ。公式にフラットレースを走って個人の記録を聞いたら、やっぱりもっと強く思うのかな。陸上やってる奴が、なんであんなにタイムのことばっかり言うのか、少しだけ理解できたよ。名刺代わりとか看板とか思ってたけど、それだけじゃないしね。出したタイムって、ほんとに“俺のも

佐藤多佳子『一瞬の風になれ 第一部 −イチニツイテ−』(講談社、2006年、p.111)主人公は高校1年生。どこまでも爽やかだ。080617-56

困ることのひとつに、「なんであんな変な邦題をつけたんだ」と責められるというのがある。これは濡れ衣だ。字幕屋は邦題にかかわっていない。シリーズ物を除き、字幕翻訳の段階で邦題はまだ決まっていないので、業務連絡もすべて原題でおこなう。とはいえ、いちいち原題をアルファベットで打つのは面倒なので、勝手に直訳したり簡略化したり、時にはふざけて内輪の邦題を確立してしまうこともある。二〇〇五年の『イカとクジラ』は、原題そのままの直訳邦題だが、業務連絡ではなぜか「イカタコ」になっていた。

本が好き!(光文社)2008年7月号、p.32 太田直子「字幕屋は銀幕の裏側でクダを巻く」今回(第十二回とある)は「やりたい邦題」という題になっているが、どうやら「やりたい邦題」は業務連絡時だけで(題名を考えるのは配給会社の宣伝部だしね)、だからこ…

次の電車が接近中です。

昨日開通したばかりの東京メトロ副都心線に乗ってみた。新宿三丁目から渋谷に向かったのだが、北参道を出たところで10分ほど停車。明治神宮前では中途半端なところで停車したままで、これもだいぶたってホームを半分ほど前進してやっとドアがあく始末。まだ2…

――昔の梅干しはかなり塩辛く、その面には塩がふき出ていたように覚えます。お茶受けには、こんもりと砂糖を振り掛けました。

又、お弁当には、必ず真ん中にそれを隠すように入れました。それでもアルミの蓋のその部分に、穴が開くのは常識でした。若い日の懐かしく、忘れ得ぬ思い出です。 月刊ずいひつ平成二十年六月号、p.13 渡辺通枝「梅干し」引用はしたけれど、私の記憶に重なる…

美人市議

朝日新聞、37面 ネットで全国区「美人市議」後援会員 県外や外国までこれは知らなんだ。青森県八戸市議会議員の藤川優里(ゆり)さん(28)が、その人。ネットではすでに有名人で、公式ホームページにアクセスが集中してパンクしたこともあるらしい。「美人…

「見た人に犯行を止めてほしかった」

朝日新聞朝刊6月8日に起きた秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大(ともひろ)容疑者が、警察の取り調べに対して、事件当日携帯サイトに書き込んだ「犯行予告」について、こう語ったのだと。「色々書いているのに、誰も見てくれない」って、携帯サイトのことはよ…

ただ、十数年前の私は、親から金をむしり取って映画を観にゆく電車の中で、自分と同い年くらいの大学生風の人たちやサラリーマンなどに囲まれ、こういうちゃんとした生き方をしないといけないんだろうな、と思う裏側で、自分の読書歴を思い返し、この電車に乗っている人間の中で「源氏物語」の原文を二回通読したのはたぶん自分だけだろうな、と、不遜で、無恥で、無礼で、しかしこの世で自分にとってだけは多少の意味がないわけでもないことを思い巡らせて、卑屈に安心していた、ということを、最後に書いておく。

朝日新聞2008年6月4日、18面 田中慎弥「夢も希望もないから」これで一文かや。なげー。田中慎弥は1972年生まれの小説家(山口県下関市出身)。ここ数年で、第37回新潮新人賞受賞、第136回、第138回芥川賞候補、第34回川端康成文学賞、第21回三島由紀夫賞とめ…

暴は剃址廁サイトの砿尖繁をしている防弥と賦します。

音栞で掲械に払撰な・・をさせて・きます。 書お署に是っていませんか?? 是っていない圭音佚湖をいだいているかたは採もしていただかなくても畠隼寄嬋健です。 もし是っているかたがいたら頁掲輝サイトをお聞いいただけませんか?? 書槻來氏・・の繁方が寄俄ー…

一生忘れられないようなことをしたんだ、みんなは。じゃあ、みんながそれを忘れるのって、ひきょうだろう? 不公平だろう? 野口くんのことを忘れちゃだめだ、野口くんにしたことを忘れちゃだめなんだ、一生。それが責任なんだ。罰があってもなくても、罪になってもならなくても、自分のしたことには責任を取らなくちゃだめなんだよ……。

重松清『青い鳥』(新潮社、2007年、p.147)罪を贖うというけれど、贖うことなんてできっこないのだ。だから最低限向き合わないと。それを重松清は、責任と言っているようだ。そして時効もない、と。重松清には吃音を扱った半自伝的な『きよしこ』という作品…

劇場内での映画の撮影・録音は犯罪です。

「NO MORE 映画泥棒!」のキャンペーン映像映画館で毎度かかる、映画をよく観る人にとってはお馴染みのCF。谷村美月の黒い涙バージョンに替えてすでに1年くらいは経っているはずだが、これ、まだ続けるんだろうか。もう飽き飽きしてるんだけど。私が、映画観…

寄生虫の中には、終宿主が餌にする生物の体内で幼生期を過ごし、食べられるのを待つものが少なくない。ミンククジラはオキアミ、魚類、イカ類を食べることによって、おびただしい数の寄生虫の終宿主となっている。

国立科学博物館内にあった説明プレートからミンククジラの小腸が展示してあり、この中にミミズのような寄生虫が、それこそ数えきれないいるのだ。そもそもこのミンククジラの小腸というのが28メートル(あてにならない私の目測による)もあって、もうそれだ…

行政訴訟や公害訴訟、薬害訴訟などではなかなか民主主義を標榜しない裁判所が、なぜ刑事裁判で民主主義を唱えるか。気味悪い判決だと私は思った。

朝日新聞2008年5月29日、15面、私の視点 高村薫「民主主義への脅威なのか 長崎市長射殺に死刑判決」ふうむ。080606-45

ところがそれがラヴェルのねらい目で、長い旋律が出てくるとてれんこてれんこ歌いたがるピアニストを制御するために、わざと右手に舌を噛みそうな音型を書き込んだのだろう。

図書2008年6月号、p.48 青柳いづみこ「二対七十五」音楽について書かれた文など、いままでだったらすっ飛ばしていたところだが、ピアノをいじりだしたことで、技量がたとえ幼稚園児(天才は除く)レベルであっても、こんなのまで読んでしまっている自分が怖…

目ざわりなものは、とりあえず隠す

飯島伸一『のほほ〜んと生きる心地好さ』(文芸社、2006年、p.118)「もちろん、これは邪道です。問題先送りの典型です」。おいおい。「でも、忙しいときに雑然としたなかで毎日を過ごすよりはよっぽどいいじゃないですか」。そうだけどぉ。「あとのことは大…

あんなことをしてしまった自分はなんて可哀そうなのだろうと思った。さらに思った。曜子さんはなんて可哀そうなのだろう。あの人はきっといまでも死んでしまいたいのだ。だからあれほど一生懸命になって洪治に感謝しようとするのだ。他に生きるすべを見つけがたくて、生きる理由を見つけがたくて、たとえ嘘だと分かっていてもあの晩の洪治を信じようとしているのだ。そうするしかないのだ。彼女が生きるためには嘘も真実もどこにもあってはならないのだ。

白石一文『草にすわる』(光文社、2006年、p.91)この主人公の独白は、大きく覆されることになる。080603-42

「理想がいけないのではない。理想を信じすぎるのがいけない。でも、理想ってやっぱり、すばらしいものですよ」

朝日新聞 塩野七生さんに文化人類学者渡辺靖さんが聞く 「(略)イギリスの政治哲学者アイザリア・バーリンは、人間が大きな理想を掲げて社会を変えられると思った時にはろくなことにならないという趣旨のことを述べています。声高にスローガンを掲げなかっ…

弾丸(たま)んね――

今日観てきた映画『シューテム・アップ』のキャッチコピー。別に「銃弾2万5千発のエクスタシー!」というのもあるが、そんなには撃っちゃいないだろ。だって86分の映画なんだから、1秒に1発撃っても5160発、だ!よ!ね? 2万5千発という数字は、どこから捻り…