姫野カオルコ『ハルカ・エイティ』★★★(文藝春秋、2005-1)

好きな小説か、と問われれば答えに躊躇してしまうかもしれない。が、あまりにも多くのまっとうなことが書かれていて、とても無碍にできない。目下の、私の姫野カオルコ様、であるし……。なのだけれど、引用となると考え込んでしまうんである。で、場違いかも…

姫野カオルコ『ドールハウス』★★★☆(角川文庫10415、H9-1)

『人形の家』なのだから主人公の理加子は最後に家を出るのである。そこは同じだが、理加子の家出は夫から自由になるのではなく、さらに根源的である両親の呪縛からの逃避だ。 私には理加子を、決して奇異な、特別な少女として描いたつもりはない。おそらく現…

姫野カオルコ『ツ、イ、ラ、ク』(角川文庫14581、H19-2、解説:斎藤美奈子)★★★★☆

どう書き残しておけばよいのか……まとまりがつかないので、いきなりハイライトシーンを。なんで、本書を未読の人は絶対に読むべからず。ここに至るには、遠回りにも感じられる小学生時代の記述からすべてを頭に入れておかなければならない(と、私が言うこと…

姫野カオルコ『もう私のことはわからないのだけれど』(日経BP社、2009-1)★★★

「赤ちゃんはまだなのって、結婚を祝う気持ちで言っても、辛い気持ちになる人がいる」ってことは有名になったけど、病気になった親のそばにいないってことは、いけないことに、まだ、なってるから。(p.79) いいと思わないのになぜするんだ、って訊く人がい…

姫野カオルコ『終業式』(角川文庫、H16-1、解説:藤田香織)★★★☆

まだ二冊目だが、姫野カオルコ中毒になりそう。というほどには何もわかっていないのだけど。ま、それは解説の藤田香織も言ってることで、要するにお楽しみが沢山残っていることなのかと……。 この物語は、これまでの著者の作品の中で、一番「普通」の話です。…

百田尚樹『風の中のマリア』(講談社文庫、2011-1、解説:養老孟司)

★★☆ オオスズメバチは、幼虫時代は肉食だが、成虫になると逆に肉などの固形物は一切食べられなくなる。そのため樹液や花蜜が食物となるが、最高の栄養源は幼虫の出す唾液だった。そこには特殊なアミノ酸化合物が含まれていて、これのお陰でオオスズメバチの…

TVニュースのカメラマンの作品は、記者のナレーションが付けられて放送された後、空の彼方に消えていき、再びスクリーンに現れることは希です。TVニュースのカメラマンには「写真集」がありません。戦争が終わった後、私の手元には、「ドープ・シート」と呼んでいた、キャプション用紙の綴りがあるだけでした。撮影した日付や場所、リポートの簡単な概要やチームを組んだ仲間の名前が、一枚の用紙に記されています。これが、私の「舞踏会の手帖」となってくれました。記されている昔の仲間の行方を訪ね、連絡を取り合い、彼らの戦時中のエピソー

本(講談社)2008年10月号、p.40 平敷安常「ロバート・キャパになりたくて」平敷安常は、元・米ABC放送カメラマン。戦争は、ベトナム戦争。081023-177

ミッキーマウスなどの世界規模のキャラと比べると、主に国内で消費されているガンダムなどしれたものなのでしょうが、主人公たち「キャラクター」はいても、ミッキーのような「キャラ」が存在しないことを考えれば、この人気の持続は驚異的なものです。

実は、ミッキーも一般的には「キャラクター」と呼ばれています。ただ、最近は「キャラ」と「キャラクター」を分けて考えた方がいい傾向にありますので、今私は、ミッキーを「キャラ」と呼んでいます。大人も結構そうですが、今の子どもは、自分のキャラクタ…

実は、この〈親〉という生き物には、もうひとつの本能がありまして、此が実に厄介な現象を引き起こすのです。それが〈子の幸せを願う〉という宗教とも信念とも言えない不気味な思念であります。

本が好き!(光文社)2008年8月号vol.26、p.56 平山夢明「非道徳教養講座 第二回 賢い親の裏切り方」賢い、親の裏切り方をするには、賢い?親の研究が必須らしい。 ところで、もともと〈親〉とは一体、何者なのでしょうか? 世間一般では子のない人は存在し…

だいたい警察官乗車の白チャリにしても、いまだに大多数は歩道を通りつづけているではないか。彼らにとっても“歩道”と“自歩道”の区別など、なきに等しい。

一冊の本(朝日新聞出版)2008年8月号、p.5 疋田智「“たかが自転車”のことだからといって、こんな二枚舌がまかり通っていいはずがない」夏前だったかなぁ、銀座の歩行者天国で怒られちゃったのね、若い警官に。歩行者天国が自転車禁止なのはとっくに知ってい…

「以前おまえにこういう問題を出されたことがある。人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか――覚えているか」

「覚えている。僕の答えは問題を作るほうが難しい、だ。解答者は、常に出題者に対して敬意を払わねばならないと思っている」 「なるほど。じゃあ、P≠NP問題は? 自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確かめるのとでは、どちら…

外国のマスコミのなかにはmultinational forcesではなく、international forcesという表現をつかったところがあった。multinational forcesはそれでよいのだが、日本語では“多国籍軍”よりも“複数国軍”と訳したほうが、より正確でなかっただろうかと、しきりに思う。

NHKラジオ上級・基礎英語1991年4月号、p.106 平野次郎「MY ENGLISH WORLD 37“多国籍軍”のトリック」国連加盟国は159か国(当時)なのに、多国籍軍に参加しているのは28か国だから、小国籍軍ではないかと疑義を呈し、multiの意味について言及したあと、上記の…

効率と生産性を価値とする社会は、他者からの評価が一瞬で下される。完璧な外見は、束の間の人間関係を繰り返し、勝ち組として生き残っていくための武器にいっそうなりつつある。

朝日新聞2008年5月11日(読書欄)久田恵「完璧な外見を求める欲望の果てには」(『ビューティー・ジャンキー 美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち』の書評)顔の見えないネット社会に逃避、するという手はいかかでしょう。でもやはり実体(って)を愛さ…