姫野カオルコ『ハルカ・エイティ』★★★(文藝春秋、2005-1)

好きな小説か、と問われれば答えに躊躇してしまうかもしれない。が、あまりにも多くのまっとうなことが書かれていて、とても無碍にできない。目下の、私の姫野カオルコ様、であるし……。

なのだけれど、引用となると考え込んでしまうんである。で、場違いかもしれないやつを。ま、『ハルカ・エイティ』は姫野カオルコの昭和史的側面もあるので、こんなのでもいいか、と。

 B29の腹からぽとんと落ちた190kgは、その腹からまたぽとぽとと39個平均で子爆弾を出す。それらに火がついて落ちる。
 B29は190kg爆弾を24個積んでいるから、B29一機につき、936個が落ちる。
 十月の九州には93600個、十一月の東京には183456個の爆弾が、ごくふつうの人の頭に、ぽとぽとふったのである。(p.174)

 数日前、334穖のB29が東京を空襲していた。312624個の爆弾は80000人以上を殺した。(p.183)

ウィキペディアでは、「325機の出撃機のうち279機が第一目標である東京市街地への爆撃に成功」「制御投下弾量は38万1300発、1783トン」とある。

爆弾の数に、よりこだわったことで「ぽとぽと」度が実感できる。

ただ312624個で80000人以上というのは、爆弾という悪魔的で破壊的なイメージからすると案外非効率的(と書くと非難されそうだが)なもののように感じてしまう。焼夷弾だったからなのか。が、火災により被害が拡大したというのは通説だし、ウィキペディアにもそのことは詳細に記載されている。って、完全に話をそらしちゃってますね、私。