「以前おまえにこういう問題を出されたことがある。人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか――覚えているか」

「覚えている。僕の答えは問題を作るほうが難しい、だ。解答者は、常に出題者に対して敬意を払わねばならないと思っている」
「なるほど。じゃあ、P≠NP問題は? 自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確かめるのとでは、どちらが簡単か」
湯川は怪訝そうな顔をしている。石神の意図がわからないのだろう。
「おまえはまず自分で答えを出した。次は他人が出した答えを聞く番だな」そういって石神は湯川の胸を指差した。
東野圭吾
容疑者xの献身』(文藝春秋、2006年、p.267)

P≠NP問題を知らない私が引用する文ではないが、『容疑者xの献身』の、献身部分について語らないでよいのであれば、おおまかな内容説明になっているので引っぱってきた。

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