それでも無事に横断歩道を渡りきったぼくは、また右に折れて歩き出し、そしてふと旭屋の軒先からぶら下がっている「本」というネオンに気づいてなんということもなしに扉を引いて店の中に入った。でも、入って山のように積まれ並べられた本を眺めたとたんにぼくを襲ったのは、或る吐き気のような不快感だった。いったいなんのためにこんなに本があるのだろう。

庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(中公文庫、2008年、p.143)

先週、銀座での時間調整はここでと決めていた旭屋がなくなっていて、あせったが(4月25日に閉店してるわけだから2ヶ月近くも気づかずにいたっていうのにね)、銀座の旭屋といえばなんたって『赤頭巾ちゃん気をつけて』なんである。いや、そんなわけないのだけど、由美ちゃんという名前と旭屋が出てくることしか思い出せなくってさ(ひでーもんだ)。

記憶を取り戻そうにも、家の本棚では『白鳥の歌なんか聞こえない』しか見つけられず(最近、本がすぐ探せないのだ)、深川図書館にもなくて、でも中公文庫には入っていて、大きな本屋には並んでいた。ま、そうだよね、芥川賞受賞の話題作で実際大人気だったんだし。いや、だからそういうこっちゃないんだ。少しでもいいから内容を思い出せってんだ!

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