佐藤可士和『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞社、2007年)

 たとえるならまさに、僕がドクターでクライアントが患者。漠然と問題を抱えつつも、どうしたらいいのかわからなくて訪れるクライアントを問診して、症状の原因と回復に向けての方向性を探り出す。問題点を明確にするのと同時に、磨き上げるべきポテンシャルをすくい上げるのです。だから、“アートディレクター=ドクター”という形容がぴったりくる。つまり、自分の作品を作るのではなく、相手の問題を解決する仕事なのです。解決策をかたちにする際にはじめて、デザインというクリエイティブの力を使うわけです。(p.29)

 いずれにせよ、問題の本質を突き止めることとは、“何がいちばん大切なのか”を見つける、つまりプライオリティをつけることなのです。これはすごく難しいことだと思います。でも、あいまいなままにしておくと、後で必ずほころびが出てきてしまう。(略)(p.54)

 おそらく、仕事を優先するあまり、机周りの整理は後回しになってしまうのでしょう。でも、それでは順番が逆なのです。まず、仕事をする場所をすっきりさせることが、仕事の効率をアップさせることにつながるのです。
 ですから、“空間”の整理術は、年末の大掃除のような義務感や、しようがないという気持ちで取り組むのはおすすめしません。整理することは、仕事の精度アップに直結する――こうしたポジティブな目的のもとに、積極的な気持ちで取り組んでください。(p.70)

 その際に、いちばん大事なことは、“言語化していくこと”です。もやもやとしていた思いを言葉にすることができれば、筋道を立てて人に伝えることができますから。言語化することで、思考は情報になるのです。(p.156)

 本当のところ、以前は自分のなかで、デザインと整理の結び付きが確信できていませんでした。わかってはいたのですが、どこかでお互いを分けて考えていたのです。ですが、本書に取り組んだことで、双方の関係がすごくクリアになりました。まえがきでのべたように、「デザインもクリエイティビティあふれる整理術」だと捉えることができたのです。実際、仕事においても、以前よりずっと明確に整理術を活用できるようになりました。言い換えれば、このテクニックが完璧に自分のものになったのです。これは自分自身の大きなバージョンアップでした。整理術という方程式がきっちり出来上がったことで、要点を空で説明することも、TOPに応じた活用をすることもできるようになったのです。テクニックというのは、効果を実感してはじめて自分のものになると思いますから、ぜひ積極的に実践してみてください。(p.220)

佐藤可士和がデザインしたものを手放しでいいと思ったことはない(ちょっと手を加えてみたくなるのだ。一からはとても作れないくせにね)のであるが、この本は素晴らしかった。

ちょうど私自身が整理を進めている真っ只中ということもあるが。ま、私がやっている整理はあまりに程度が悪すぎて、そのことについて何も書けないのが情けないのだが、でも、そうなのだ、私はこんなふうにいろいろなものを整理したかったのだ、ということがこの本の中に全部書いてあるのだった。

自慢じゃないが、私もなんとか高校生くらいまでは、仕事(学生なんで、仕事ではなく勉強になるけれど)をする前には必ず整理整頓をしていた。正確には、整理をしてからでないと勉強ができなかったのであるが。で、そんなことをする時間があるのなら英単語の一つでも覚えればいいのにとへんてこりんな癖を自嘲していたのだけれど、この本を読むと、実は正しい勉強法であったことがわかる(もっとも「ポジティブな目的のもとに、積極的な気持ちで取り組んで」いたわけではないので、どこまで効果があったかは疑わしいが)のだが、生来のというか遺伝的物好き(物品好き)故に、それが次第に機能しなくなっていて、今現在の惨状があるというわけなのだった。

であるから、整理。うむ、やらねばなるまいね、この本を読んでしまったからには。けど、言語化するというのがなぁ(空間の整理の段階で言うこっちゃないかもしれないが)。ちょい、というかめちゃくちゃ難しい。けど「言語化することで、思考は情報になる」のだよ。そう、これだ、これなのだ、私がしたかったことは(したい、というよりは足りない部分というべきなのが残念なのだが)。