辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』★★☆(講談社、2009-5)

結婚することが人生の前提にあり、未来に能力を繋げる仕事なんか望みもしない。経済的にも精神的にも一人立ちできない女たちにとって、結婚は間違いなく唯一の成果だった。その価値観しかないから、三十代以上夫なし子供なしの女性を指す「負け犬」の言葉は…

 津田大介『Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社 新書y、2009年)

このダイナミズムを更に突き詰めたのがツイッターだ。ツイッターはリアルタイム性が高く、気軽に他人の発言にツッコミを入れやすい構造になっているため、何かをつぶやいたあと、即座に反応が返ってくる。ある種メッセンジャーやチャットのような時間感覚と…

津村記久子『ポトスライムの舟』(講談社、2009年)

「二十九歳の今から三十歳のこの日までをそっくり懸けて世界一周か。なんかこう、童話でようある感じでもあるよね。その一年間は加齢を免除されるというかさ。違う世界に行って帰って来たら、ほとんど時間が経ってませんでした、的な。うまく言えんな。まあ…

月より400倍大きい太陽が、ちょうど400倍遠くにある。

朝日新聞2008年8月22日夕刊、13面 辻篤子「偶然の贈りもの」(窓 論説委員室から)これ、わかりやすいや。「月が太陽を完全に隠す皆既日食が見られるのは、この配置の妙のおかげだ」と。日食は、太陽と月が重なるという偶然以前の偶然の産物なのね。080823-1…

円空と木喰の残した木彫は「巨匠」の名をかぶせるにはあまりにも自己流である。だが生涯を民衆のための布教に捧げた二人の仕事の豊かな全体を考えると、巨匠という呼び名もあながち的外れではない。

東京国立博物館特別展『対決 巨匠たちの日本美術』会場の展示説明プレート(に名前はなかったが、展示室に置いてあったカタログに辻惟雄による同じ文が載っていた)実物を見たのは多分初めて。最近、彫刻のよさがわかってきた私である(ホントかよ)。080802…

文楽に登場する男は、やたら泣く。大人になっても親に叱られて泣き、金がなくて泣き、女にふられて泣き、女に尽くされてもありがたさに泣き、一日ニ四合ノ玄米ヲタベルヤウナモノニワタシハナリタイ、という勢いで泣き、とにかく悔しくても悲しくても愛しくても怒っても情けなくてもすぐに泣く。

青春と読書(集英社)2008年7月号、p.36 三浦しをん「日常劇場 第9回 泣き男」そう言われてみると……。江戸時代の先進性が、三浦しをんの手によっても解き明かされていく……。080729-98★080908追記 「現代人の涙の量は、100年前の3分の1にまで減ったとされてい…