D・カーネギー(山口博訳)『人を動かす[新装版]』(創元社、1999年)

およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない。(p.27) この本には確かに「人を動かす」秘訣が沢山書いてある。具体…

驚きの連続でした。とくに、鳥の鳴き声に予期せぬ言葉が多かった。ウグイスが「月日星」の声を上げていたり、ヌエが「死」と不気味な声をあげていたり、フクロウが「糊すりおけ」と鳴いて明日の天気を占っていたり。滑稽小説『西洋道中膝栗毛』の「滑稽稿と鶏が啼く」という自己宣伝には、思わずニヤリ。かと思うと、親鳥が「ウトウ」と鳴き声をあげて子供を呼ぶと、子鳥が「ヤスカタ」と鳴き声をあげて答えるという記述まである。「うそ! 信じられない。確かめてみなくっちゃ」。こうして、鳥の声を写す言葉の歴史にのめり込んでいきました。

本(講談社)2008年12月号、p.26 山口仲美「「滑稽稿」と鶏が啼く」 (注:「月日星」は「つきひほし」、「死」は「シー」、「滑稽稿と鶏が啼く」には「コツケイコウ」と「とり」のルビ。「声を上げて」の「上げて」が最初だけ漢字なのは、私の誤植にあらず…

人間の五感の中では味覚はもっとも保守的なものであり、知っているものしか美味しいと思えないものです。

アットワンス(JTBパブリッシング)2008年10月号 「山本益博、東京フレンチで遊ぶ」(監修:山本益博、文:粂真美子)食べることに興味がないので、フランス料理について書かれたものを読むなんて、我ながら信じられないくらいなのだが、まあそれなりに面白…

でも本当は三尺棚1本くらいをひなが一日いじくり回していたい。ときどき、並べた棚を二、三歩下がって眺めて惚れ惚れ。おお、なんと美しい棚でしょう! 左から右へ自然に流れて、まちまちな版型も脈絡を壊さずに美しく収まり、定番もあるべき位置にきちんとあり、おっと目を止めさせる破調の一冊もさりげなく差してある。まぁ、今こんなにのびんりしたことはちょっとやっていられない状況かも知れません。これを一日、棚20本くらいできればいいんだけれど。

ランティエ(角川春樹事務所)2008年10月号、p.98 本屋の本屋さん 第2回 リブロ池袋本店 矢部潤子さんすべての本屋さんが自店の棚をこんなふうに作っているんだとしたら、うれしくなってしまう。でない店が多いんだけどね。大型店でもがっかりなところが多い…

プランゲ文庫では、検閲官に赤鉛筆や青鉛筆で「delete(削除)」とか「suppress(発行禁止)」と書き込まれたゲラを見ることができます。たとえば林健太郎は『歴史と現代』という本を執筆した際、事前検閲で削除の指示を受けたところをうまく文章をつないで直しているのに対して、羽仁五郎は『歴史』で削られたところを脈絡なくつないでそのまま本にしています。

(p.4、山本武利)データベースを使えば、言説の内容と数量的なデータとの重層的な構造を立体的に示すことができるようになるでしょうね。ところが書物の場合には、時系列的に並べざるを得ないので、ある視点からの見方をどうしても強力に出さざるを得ない。…

魯山人以前の日本料理は、膳に載せてすべての料理を一度に出していた。それを熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに供するために、一品ずつ出すようにしたのが魯山人である。

月刊百科(平凡社)2008年8月号No.550、p.2 山田和「魯山人を食べる」画家や陶芸家などとしてならまだしも(ホントにまだしも)「美食家」北大路魯山人って、「美食家」とついた時点で私的にはどうでもいいや、になってしまうんである。というか、魯山人につ…

いつのまにか、雑誌は大変なことになっていたらしい。日本の雑誌の販売部数は95年をピークに減り続け、07年には推定約26億冊と3分の2に。販売額も97年の約1.6兆円から10年連続で下がり昨年は約1.2兆円に落ち込んだ。昨年休刊した雑誌は過去最高の218誌で、06年から2年連続で休刊誌の数が創刊誌の数を上回った(出版科学研究所調べ)。

朝日新聞2008年8月4日夕刊「雑誌はどこへ1 デジタルな未来 その一」(署名記事:山口栄二)記事ではデジタル雑誌の無料化の流れに触れているが、フリーぺーバーの存在も大きそうだ(これについてはそのうち出てくるのかも)。今ではフリーチョ(https://www.…

「父も母も、教師で。母は小学校で、父は大学で教えていました。だから、政治的な季節が来れば、うちはいちばん最初にターゲットになってしまう感じ。それともう一つは、出身がよくなかったんですね。出身階級というのがあって、母の家は地主の出身で、親戚には海外に行ったりした者がいて、外国と関わりを持つ人たちはまず信用されない社会でしたので、なおさら問題にされる環境でした」

本の話(文藝春秋)2008年8月号、p.9 楊逸 著者インタビュー 天安門から遠く離れて(聞き手:「本の話」編集部)オリンピックということもあり、中国の映像はかなりの量が入り込んでくるようになったが、映像だけではそこにある背景はなかなかわからない。こ…

一体、以上に記した「空気」とは何であろうか。それは非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ「判断の基準」であり、それに抵抗する者を異端として、「抗空気罪」で社会的に葬るほどの力をもつ超能力であることは明らかである。以上の諸例は、われわれが「空気」に順応して判断し決断しているのであって、総合された客観情勢の論理的検討の下に判断を下して決断しているのでないことを示している。だが通常この基準は口にされない。それは当然であり、論理の積み重ねで説明することができないから「空気」と呼ばれているのだから。従ってわれわれは常

山本七平『「空気」の研究』(文春文庫、2000、p.22)昨日の続き。「空気」も研究されてしまうと、なかなかに難しいものなんである。080727-96

えぇと、そんな日々を思い出しつつ、『カイシャデイズ』を書きました。というと嘘になります。正直、この小説の舞台である会社、〈ココスペース〉の社員達にはモデルがおりません。しいていえば、どれもこれもぼく自身です。

この際だからはっきり言っちゃいますか。 駄目なヤツはぼくで、ちょっとかっこいいヤツはぼくがこうなりたいという人物です。うんとかっこいいヤツはでてきません。ついでにいえばアイドルっていうか、マドンナ的存在の女性はぼくの好みです。はい。 本の話…

やがて、真紀は煙草を覚えた。

はじめて店においてある煙草の封を切ったとき、ああこんな風に喫いはじめるのか、と思った。 煙草を喫う女が好きではなかった。 いまでも人前では喫わない。ひとりのとき、煙が動くのがよかった。周りの空気が透明すぎるより、少しぼかされていることが慰め…

誰もが、祝福した。

誰もが、祝福しすぎることで、人々の内心の思いが逆に浮かび上るようであった。網元の長男と校長の娘の、いわば選ばれた、恵まれた婚礼を、同年輩の青年たちも、少しも斜めに見なかった。それが、かえって二人の行先きの不幸を、人々が予想していることを示…

ヒトラーが当時最新の拡声技術を用い、その声の激情で大衆を扇動した裏で、ルーズベルトとチャーチルが血も涙もない機械の声で淡々と密談を交わしていたという事実は対照的で面白い。

未来(未來社)2008年6月号、p.19 山川冬樹「声に潜勢するもの7 デイジー、デイジー、」ホーメイ歌手(これは知らなんだ。知らないことばっかりだ。それに覚えてられそうにない)である山川冬樹が、電気式人口咽頭や「ヴォコーダ−」技術について書いている。…