2009-01-02から1日間の記事一覧

暗い五燭の電球が描き出す壁の二つの影法師は微動だにせず、家のうちもしんしんと静かで、火鉢の燠の、尉となってはらりと落ちる、そんな音まで聞こえそうな夜であった。

(注:「燠」に「おき」、「尉」に「じょう」のルビ) 宮尾登美子『藏(下)』(角川文庫、H10年、p.182)「尉」は炭火の白い灰の意。実は、上巻の途中までなかなか乗れずに、投げだしてしまおうかとも。が、あるところまで来たらページをめくるのももどかし…