無理を承知で、一度みなさんもこう思ってみて欲しい。

――こんなにひどく見える世界ではあるが、それでも、ここは完璧な世界なのだ
と。

白石一文『どれくらいの愛情』(文藝春秋、2006年、p.439)

この本には表題作の他にも『20年後の私へ』『たとえ真実を知っても彼は』『ダーウィンの法則』という作品が収められているのだが、今回の引用は作品の中からではなく「あとがき」から。

そう言われてみると白石一文の作品群はどれも「完璧な世界」故の物語なのだと思い至るのだが、物語としてはわかっても、私にはこの「完璧な世界」というやつが現実の中に見えてこないんである。「世界は十分に完成されて」などはいないが、しかし「それ自体に何らかの重大な意味が籠められている」と考えるのは悪いこっちゃない。ここまでが精一杯で。けどこんなにも真剣に言われてしまっては、この先も折に触れて考えてみるかって気になります。

080531-39