人間というのは現在しか見えないつくづく寂しい生き物なのだと思います。要するに、希望も絶望も人生には本来無用のものなのかもしれない。僕たちはただ、希望も絶望もないこの茫漠たる世界で、その日その日を生かされていくだけ――きっとそれが嘘偽りのない真実なのでしょう。

白石一文私という運命について』(角川書店、H17、p.324)

この本は、小説にしては言葉によりかかりすぎていて(といったらおかしいのだけど)、物語よりは(ってこれもこう書いてしまうとおかしいか)それを動かしている言葉が、こんなふうに部分的に取り出してしまっても、どこまでも読み手を逃すまいと追いかけてくるのだ。

言い換えるとこれだけを読んでも面白いのだけど、でもそれが会話だったりすると、私のような人間にはとてもこんなふうに理論的には話せないし、また話されても何を言われてるのかわからないだろなーと。本の内容より自分の知的レベルが心配になってしまうんだけど、それはまた別の話。

気になる言葉を抜き出していったらけっこうな量になってしまったので、ま、ひとつだけにしておいた。何かのときにまた引っ張り出してしまいそうだけど。

080510-18