人間は感情の生き物である。

しかし、すべての人が同じ数だけ感情を持ち合わせているわけではない。
言葉が関係するのかもしれない。
名前のつかない感情は存在しないに等しい。言葉を知らなければ、自分の中にある感情は感情として立ち上がってはこない。そういう場合は、何らかの行動、自分でも欲求の分からない行動が出現する。それを嗜癖というのである。
嗜癖とは自分の中の抑圧された感情の代わりに現れる行動で、そのことが本人にとってよろしくないのは、本人がその感情の中心にいないで、都合の悪いことから逃げているからである。状況は何も変わらない。

一冊の本(朝日新聞出版)2008年8月号、p.56 小倉千加子「結婚の才能 第七話 日本の中心で愛を叫ぶ」

嗜癖って、嗜好が病気になる一歩手前のようなものかと思っていたけれど、もっと広義に解釈できるものらしい。

で、少し先には、「恋」の定義が異なる人同士が「恋」をすると、面倒なことが起こる、と書いてある。私も恋について語りたいのだが、これを読んで思いあたるのは、母親と私の、最近の関係だった。親子なのに違う言葉で会話してることがあるもんな(つまり会話になってないんである)。

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