卓也のその言葉を聞いて、のゆりは一瞬、ぞくりとしたのだった。世界がくるりと回転して、目の前に現れたのは今までと同じ世界のはずなのに、ところどころのものの、色や形がいつの間にか入れ替わってしまった、それでもおおかたのものは元通りで、じっと見ているうちに、何が入れ替わって何が元のままなのか、区別がつかなくなっていってしまう、そんな感じだった。

川上弘美『風花』(集英社2008年、p.249)

くるりとは回転してないのだけど、どこか以前と違う世界にいるような気分になることがあった。くるりと回転する場面に遭遇したのなら、その謎にも迫れそうな気もするのだが、そもそも私のことだから、くるりと回転しても気づかずにいるんだろうか。

川上弘美はきっとそれに気づいている人で、だから気づかない私は、川上弘美の本が置いてあると、読まなきゃとは思っていないのに、手を伸ばしてしまうみたいなんである。

とってもくだらないことなのだけど、p.67に「ない」という字が5個横に並んでいた。このうち偶然?は1つで、他は行を変えて「わかんない」と「つまんない」を繰り返しているだけなんだが。

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