むかしのことを言うのは、気が引けるが、私の学生時代の一九五〇年代には大新聞社主催の「ロートレック展」などというのがデパートで催されると(大型の展覧会はデパートで催されることが多かった。いまでは不許可の国宝、重文などもデパートで公開されていた)、一応絵は額にはいれられているが全部複製、つまり印刷物ということは珍しくなかった。

図書(岩波書店)2008年10月号、p.18 坂本満「「本物」と複製、そして版画(上)」

えー、これはびっくりだ。私の「有名作家美術展」のはっきりした記憶(つまり自分から行きだした)は1970年からで、だからそれより20年も前のことにしても、だよ、複製の展覧会があったなんて。

坂本満の「本物」をめぐる話は多岐に及んで、「本物だからと言っても百パーセント信頼できるものではな」く、「経年変化がつくりだす美的効果」から、展示品の置かれている照明についてになり、そこから「複製の、ますます技術的に高度化する精度をもつ複製の利用」の有用性となって、あららら、複製の展覧会と見下しびっくりの私は、立場がないのだった。

で、「本物」の正体は、ってことなんだけど……。

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