私は後に彼女に象徴される当時の進歩的日本人の思考方法の欠陥について「鳥目の日本人」という論文の中で批判したが、「樺美智子は自分で自分を踏み殺した」としかいいようないと記した私の表現を、出版社はこれだけは削ってくれと泣き込んで来、ならば掲載は取りやめても結構と伝えたら、発刊された雑誌には無断でその部分が削除されていた。

江藤淳『妻と私・幼年時代』(文春文庫、2001年、p.189)に収録されている、石原慎太郎『さらば、友よ、江藤よ!』から

樺美智子ちゅーたら当時はジャンヌ・ダルクみたいな存在だったから(ってよく知らないのだけど)、出版社も譲れなかったのかもしれないが、でもそれとこれとは話が別で、どこなんだ、この出版社。

で、調べてみたら『鳥目の日本人』は、展望(筑摩書房)の1967年10月に載ったようだ。樺美智子が死んで7年後でもそんなだったのね。けどなんでそのまま載っけないかなぁ。そこだけ削除なんて最低でしょ。

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