そんなわけで私は、わー暗譜だ、すごいね、という価値観には賛同したくない。暗譜することよりも正しく楽譜を読むことの方が、ずっと重要だと思うからである。往年の大指揮者ハンス・クナッパーツブッシュは、なぜ暗譜で指揮なさらないのですか、という問いに、「オレは楽譜が読めるからね」と答えたというが、それは単なる冗談ではないであろう。楽譜を読むことは、つねに立ち返るべき、音楽の基本である。

本(講談社)2008年11月号、p.34 礒山雅「暗譜考」

ホントにそうなのだ。ピアノで小学生唱歌をたどたどしく弾いている身で、国立音楽大学の教授に、お説ごもっともなんて言える立場じゃないのは百も承知なのだが、暗譜してピアノで何曲か弾けたからって、嬉しくないんだよねー。楽譜を見て、じゃちょっと弾いてみるか、にならないと。あ、そういうレベルじゃないって。はいはい。

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