佐高信『手紙の書き方』(岩波アクティブ新書11、2002年)

 多分、いま、手紙は書かれなくなっているのだろう。即時コミュニケーションの手段が発達して、手紙はまだるっこしい感じを持たれるているからである。しかし、手紙でしか伝えられない気持ちもあるのではないか。私はこの本で文字通りの「手紙の書き方」を伝授するつもりはない。そうではなくて、さまざまな実例を通して「手紙の効用」といったものを書きたいと思う。それを読んだ結果として、自然に「手紙の書き方」を身につけてもらえればと思うのである。(p.2)

題名はまったくの嘘なんだけど、さすがにそのことについては最初に弁明してた。「手紙の書き方」は、裏表紙にある6行の箇条書きがすべてといってよく、それ以上のものが本文にはないんだから。この題名が悪いとは言わないが、でもねぇ。

手紙の紹介とそれにまつわる話は、佐高信らしいものが多く、でも軽い読み物になっている。

 表面的には、野口シカが英世に送った「はやくきてくたされ」の手紙と、この、かの子が太郎に送った手紙は対極に位置すると見えるだろう。しかし、私は、その想いの強さにおいて、それがそれほど隔たっているとは考えられない。
 「はやくきてくたされ」と「察しなさいよ」は、やはり、同質の愛情なのである。違いがあるとすれば、シカが無名の母親であったのに対して、かの子は歌人として、そして、作家として、有名な存在であった。(p.69)

この本は引用が多いので、そこからまた引用すると何がなんだかわからないものになってしまうので、佐高信の文章だけのところを無理矢理見繕ってみた。