有川浩『図書館危機』(メディアワークス、2007-1)

★★☆

 検閲を根本的に排除するためには良化委員会と図書隊が同格の国家公務組織になる必要がある、というのが『未来企画』延いては慧の主張である。
 同格の国家行政機関、それも文科省機関になることで法務省と検閲の正当性そのものを争うという慧の思想を実現するためには、現行の図書隊は何だかんだと言って基盤が固すぎる。原則派と行政派の対立にしてもそこに分断の楔を打ち込むほどの隙はない。(p.192)「排除」に「はいじょ」、「延」に「ひ」、「楔」に「くさび」、「隙」に「すき」のルビ

自衛隊にベタ甘(まずこの発想がねぇ)、図書館「戦争」だろうがベタ甘。題材が何であってももう絶対ベタ甘で、有川浩の場合、それは正しい選択なのだと認めざるを得ないのだが、それでいて難しいことからも逃げていない。この巻では、差別語や無抵抗主義についての考察がなされているのだが、って、こういうのを正面から論ずるのは私が不得意なんだよなぁ。うん、有川浩は立派だ。私とは大違い(こういう書き方で誤魔化しているだけなんだけど)。

 あと一巻お付き合いくださいませ。(p.343)『あとがき』より

だって。