有川浩『ラブコメ今昔』(角川書店、H20-1)

★★☆

『ラブコメ今昔』『軍事とオタクと彼』『広報官、走る!』『青い衝撃』『秘め事』『ダンディ・ライオン〜またはラブコメ今昔イマドキ編』の6篇からなる短篇集。

 誰か一人でも気づいてくれたら。その思いを拾ったのがまさか−−防大出エリートというだけで叩き上げには気にくわないこの女だなんて。
「『ダンディ・ライオン』にも総火演の展示のときと同じ思いを感じました。もし、あの写真に籠められている思いがあるとしたら−−」
 言うな。
 もし、この女が言い当てたら−−言い当てたら、俺は一体、
「『不屈』かなって」
 畜生。やみくもに反発を覚えた。
「俺は『ダンディ・ライオン』には副題を付けていません。勝手な想像をされるのは迷惑です」
 自分でもやばいと思った。階級がという以前に相手は女だ、きつすぎた。(p.254)「籠」に「こ」のルビ

こう続けちゃったらファンでもなければ飽きが来てもおかしくないだろう。事実その通りで、有川浩らしい仕掛けは感じながらも多少もてあましていた……って、いやまぁ、白状すると、それなりに楽しんじゃってたか……。