進藤義晴、進藤幸恵『幸せになる医術 これが本当の「冷えとり」の手引き書』(PHP研究所、2011-1)?★★☆

 病気のほとんどは、食べ過ぎが原因で起こります。ろくに嚙まないで食べると消化吸収が悪く。栄養が十分体に入らない。30分かけてゆっくり食べる暇がない時は、「食事を抜かせ」という合図だと思うこと。
 絶食すると、内蔵の毒がよく出ます。(p.19)「嚙」に「か」のルビ

 私はいろいろな医学を渡り歩いてきました。最後に到達したのが冷えとり医学です。
 東洋医学の古典には、「草根木皮(漢方薬など)、これ小薬」「鍼灸、これ中薬」「飲食衣服、これ大薬」と書かれています。(p.20)「草根木皮」に「そうこんもくひ」のルビ

私自身「冷えとり」(この本に書いてある意味での冷えとり)を本当に信じてよいのかどうかの結論は出ていない。

が、基本的な考え方は大いに共感できる。

 不健康な時は、本能が狂って毒を出す能力が鈍くなっています。しかし、冷えとりをすることで体がだんだん正常になると、排毒作用が強くなります。このため、快方に向かう時に痛みが強くなったり、血が出たり、湿疹が出たり……と、より派手に症状が出ることがあります。こうした好転反応を「瞑眩」と言います。(p.22)「体がだんだん正常になると、排毒作用が強くなります。」は色付きボールド表示

わからないのが、この毒という概念。いや、概念としてはそういうものかと思うのだけれど、説明が抽象的なままなんでね……。

 素直に取り組める人は非常に珍しいのですが、このようにケロリと悟るというか、あまり片意地を張らず、原則をきちんと守って冷えとりをすれば、100%治るのです。すると病院に行かなくてよくなります。医者にかからなくてもよい方法を医者が教えているというのは非常におもしろい話ですが、医者をいらなくすることが、本当の医者の役目だと私は思うのです。(p.27)

「素直に取り組め」ば「100%治る」んだ。それだけ自信があるから、鼓膜の再生(p.4)も腎機能の快復(人工透析からの解放)(p.5)も、さらには肝臓癌の末期の人(p.26)や赤ん坊の頭より大きな子宮筋腫に、卵巣まで再生(p.29)してしまうのだと書いているのだろう。「アトピー性皮膚炎は難病のうちに入らず」(p.59)だもの。

だけどさぁ……。

ここで私の意見を述べても仕方がないのだが、基本的には人間の体は自然にしているのが一番ではないかと思っている。それで大丈夫なように人間も進化してきたはずなのだ(もっとも進化がすべて良い方向かというとそうではなのだが)。

そう考えると「冷えとり」(「冷え性」とは違うと言ってます)のため、一年を通して靴下を重ね履きするのはどうなのかと。頭寒足熱には賛成するが、夏場だったら頭を冷やすのがより合理的と思ってしまうの。

といいつつ、次女の熱心な勧めもあって多少ながら「冷えとり」実行中の私なのだった(冷たいものは控えるという状況までにはなっていない。これは西原医学も言ってたことなんだが)。何故その気になったかといえば、手軽でお金がかからないという私らしい理由なのだった。

ところで、この本には次のような記述もあった。

冷酷――自分に都合のよいことだけを考える心の冷たさが冷酷です。他人に対して思いやりがない人は、心臓や血管系統が悪くなりやすいです。心筋内でうまくカルシウムイオンが働かず、代謝異常を起こしてしまうため、腎臓、尿管、唾液腺や胆のうなどに結石ができます。しかし、心筋の異常はよほど重症にならないと心電図などの数値に出てきません。結石を手術で除去しても繰り返し出てくるような人は、冷酷な心で心臓を悪くしていないかどうか反省が必要です。(p.74)

実は私、とんでもない結石持ちで、昨年には膀胱から3センチ近い大きさの卵を摘出したのだった。あと、歯石もすぐ溜まってしまうし(体質とは昔の担当医)、そういえば近年は減っているが、たまに心臓が痛くなるし、血管が変だと大騒ぎしたこともあったっけ……。

で、冷酷なのよ。

半信半疑ながら微妙に痛いところを突かれちゃてるなぁ、と。