ひとつのバイトが終わると、その給料のほとんどを文庫に注ぎ込み、自室の床に積み上げては、うえから順番に読んでいきました。読むものがなくなったら、しぶしぶ働きに出るという日々を続けました。

その間、季節は正しく巡っていたはずですが、その記憶は、わたしにありません。温度を一定に保ったドームのなかで過ごしたような感じがします。
本が好き!(光文社)2008年8月号vol.26、p.5 朝倉かすみ「夏休みには、『夏休み』」(テーマエッセイ 夏休みこその「この一冊」)

本好きってことになっている私だが、朝倉かすみのようには本を読んだ記憶がない。悲しいことに私の場合、かなり長い間義務感でもって本を読んでいたふしがあるからだ。もちろん好きな本にのめり込んだことがないというのではないのだが、これについて書き出すとちょっとでは終わらなくなってしまうので、機会があったらで。で、結論(は。何の)を言ってしまうと、うらやましくっても私にそういう季節がやってくることはなさそうだってことだ。

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